「あのまちは外国人が多くて危ないらしい」「あの人たちはルールを守らない」
日々の暮らしの中で、ふと耳にする「うわさ」や偏見。これらを「正しい情報」だけで説得しようとしても、なかなか届かないもどかしさを感じたことはありませんか?
2026年7月6日、尼崎市立すこやかプラザにて、スペイン・バルセロナ発祥のユニークなアプローチ「反うわさ戦略」をテーマにしたイベントに参加してきました。

ゲストは移民研究者の上野貴彦さん、お隣・豊中市で多文化共生の現場を支える山野上隆史さん。参加者とともに「まちぐるみでつくる共生」のヒントを探った2時間半でした。
うわさの診断をしてみよう
会場でまち歩きのWalkinAboutでよくご一緒するユンさんに会い、隣に座りました。最初は前後の方たちと「うわさ」を話す時間となりました。
カノはクリエイターとして、とあるまちの社会的処方マップを編集制作することになり、そのまちで「ベトナム人が増えているらしい。自転車に乗って歌っていた。」という、どちらかというとポジティブなうわさを聞いたけれど、最初の一文だけ聞いたときは今から偏見を聞くことになるのかも、と身構えたという話をしました。
ちょうどそんな話を聞いたタイミングで若狭さん(今回の司会者)の投稿か何かを読んで参加したのでした。
バルセロナ発! 反うわさ戦略とは?
上野貴彦先生からバルセロナ発祥の「反うわさ戦略(Anti-Rumour Strategy)」の背景と本質が語られました。
うわさの背景にあるのは「不安」と「摩擦」
上野先生は、移民や外国人に関する「うわさ」が広がる原因は、単なる情報不足ではないと指摘します。
- 誤情報: デマ。
- 生活の不安: 雇用、住宅、福祉への将来的な不安。
- 制度への不信: 行政やメディアへの信頼感の低さ。
- 地域の摩擦: 接触の場面から生まれる誤解。
これらが絡み合っているため、いくら正論をぶつけてもかえって反発を招いてしまう。だからこそ「論破」ではなく「解きほぐす」アプローチが必要だといいます。
「反・うわさ・戦略」の3つの意味
バルセロナは現在4人に1人が外国人らしいです。バルセロナでは20年かけてこの仕組みを構築してきました。
- 反(anti): 敵対ではなく「先回りして未然に防ぐ」。アンチって言葉はちょっと違和感があるけれど、アンチエイジングのように先読みするということらしいです。ONE PIECEで言う見聞色の覇気でしょうか。
- うわさ(rumour): 単なるデマではなく「不安や誤解が混ざった誇張」。
- 戦略(strategy): 単発のイベントではなく、教材やネットワークという「仕組み」。この部分は自治体職員の人にも考えてもらいたい、と話されていました。
印象的だったのは、まちの商店主や住民が研修を受け、日常の雑談の中でうわさを解きほぐす「反うわさエージェント」という存在です。「技法としての共生」として、一部の専門家だけでなく、まちぐるみでこの視点を持つ重要性が語られました。
以下「実際、何をしているの?」のスライドをコピペしたメモです。
①ウワサを診断する 何が語られ、なぜ信じられているのかを読み解く。
②共感者を増やす 行政だけでなく、ご近所や個人・団体が一緒に担う。
→劇団員を呼んで、うわさをつくる人をつくる、という話もされていた気がします。③レパートリーを増やす 疑念をもっている人はパンフなどをそもそも読まないので、SNSなどもターゲットを決めて戦略的に活用するとのこと。
SNSの活用はスライドで紹介されていた猫のイラストは見つけられなかったですが、このあたりも関係ありそうです。
③の工夫として、「うわさが現実を見えなくする」と書かれた缶バッチや風船など配るそうです。
こちらのPDFの反うわさ戦略のつくり方によると、ほかのまちの取り組みも読めました。
「偏見のゴミ箱」ニュルンベルク市
紙に自分が経験したうわさを書き、裏には自分がひそかに抱いているうわさを書いて、それをゴミ箱に捨てる。
「うわさ交換店」ルブリン市
まちの通りに白紙のポスターを何枚も用意する。自分が耳にしたことのあるうわさを書き込む。→これ見てみないとちょっとよくわからないかも。
会場で聞いた話に戻ります。
「世界!びっくり・ふしぎ・ほっこりエピソード」静岡県袋井市

海外の人が増えている地域で参考になりそうな取り組みです。
朝日新聞の「【解説人語】スペインで進む「反うわさ戦略」とは 偏見を予防、でも説得は厳禁?」という動画もわかりやすかったです。
朝日新聞のこちらの記事「移民へのヘイトやフェイクニュースに対抗 スペインの反うわさ戦略」によれば、

バルセロナは市役所発の取り組みだけど、アンダルシア州ではNPOが中心となって反うわさ戦略の活動を広めている
そうです。ほか、本文によれば、密接に政治がからんでくることがわかりました。
配布されていたこちらのPDF「共生」をつくる人を育む バルセロナとビルバオの反うわさ戦略からも何かの参考になりそうです。
この動画のVideo1〜5もわかりやすそう。
必聴!おとなり豊中のチャレンジ
続いて、尼崎のお隣・豊中市で多文化共生の最前線に立つ山野上隆史さん(とよなか国際交流協会)から、現場での生きた取り組みが共有されました。
豊中市には約8,846人(2026年3月時点)の外国籍住民が暮らしており、その国籍は100カ国以上に及ぶそうです。
「教える」から「交流」へ。居場所を編み直す
山野上さんは、これまでの「日本語を教える場」から、「対等につながる交流の場」へのシフトを強調します。
- 日本語交流活動: 勉強型ではなく、生活情報を共有し友だちをつくる場へ。日本語をどこで使っているかをヒアリングしたところ、ここ(教室)という回答だったので、友だちができる方向にシフトしたそうです。
- 外国人ママの居場所「おやこ」: 子連れで集まり、母語で悩みを共有できる安心できる空間。コロナ禍は公園で開催したそう。
- 防災事業: 外国籍市民を「支援される側」ではなく、「地域の一員」として避難訓練に巻き込む。自分メモ→技能実習生が働く会社といっしょに何かすればよいかも
etc。
「まずは『その場にいる人』から、どうやって顔の見える関係に編み上げていくか」ということが大事、とのことでした。
みんな反うわさエージェントだよ
最後は参加者同士のグループワーク。お題は何だったか忘れましたが、「あなたもできそうな反うわさ戦略は?」だったかな? カノは「世界のご飯にのせたい食べ物選手権」「好きな日本のアニメは何ですか」が良いのではと話しました。最近会ったスペイン人が日本のアニメの話をしていたので。
まとめ
上野先生が個人の「やる気」や「善意」に頼り切るのではなく、図書館、学校、病院、役所といった、あらゆる公的な専門職が、日常業務の中にこの「反うわさ」の技法を埋め込んでいくことが大事、みたいなことをおっしゃっていた気がします。
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